鳥類学者のファンタジア

鳥類学者のファンタジア (集英社文庫)

鳥類学者のファンタジア (集英社文庫)

ジャズピアニスト、フォギーこと希梨子の演奏中、そばに現れた女性は1944年にドイツで消息を絶った祖母だった。光る猫パパゲーノに導かれ、希梨子はナチス支配下のドイツへ旅立つことになる。

奥泉光でございます。
ナチス支配下のドイツ、ロンギヌスの聖槍、フィボナッチ数列、ドイツ神霊音楽協会、宇宙オルガン、水晶宮ピュタゴラスの天体などいかにもSFやファンタジー、伝奇小説らしいアイテムてんこもりなのに、どこか緩さを感じるのは語り手で主人公の希梨子のせい(おかげ?)なのでしょう。これだけのアイテムがあれば、思い切り耽美な物語になりそうなのに、日常をばんばん持ち込んでくれて(慣れないガーターベルトで足が痒い、とか)思わず笑ってしまうことが数えきれず。希梨子の「弟子」こと佐知子ちゃんもそれを加速させちゃってどこにいくのこれ?と思っていたら、最後に驚かされることに。

ジャズに詳しければさらに楽しめただろうな。残念。